今回のコラムは、前回のコラムの続きです―
担: これまで、ガイド業をされている時の経験が、トーナメントとかメディアの取材とかに通じているって感じる事はありますか?
平: それは、めちゃくちゃ繋がっていると思います。釣りの総合力を上げてくれている気はしますね。これは、ガイドだけの話でなくて、例えばエギングばかりしているエギング大好きな釣り人がフカセ釣りにもしチャレンジしたとしたら、エギングにもプラスになることがたくさんあると思うんです。逆もまた然り。
平: 自分の中では結局、釣りって糸一本と竿を使って魚を釣る。その先にルアーが付いているのかエサが付いているのか、その違いだけだと思っています。「魚釣り」自体が、潮を無視したり海の事を無視したりして力技で魚を引き出せるようなジャンルではないと自分は思っていて、潮の事を知ったり海の事を知ったり深く理解できればできるほど良いと思っています。
エギングでわかる海の事とフカセ釣りでわかる海の事は違うけど、関係ないようで関係している事も結構多いんです。新しいエッセンスが、違う釣りをすることで加わるんです。
担: そこが加わると、釣果にも違いが出てくるわけですね。
平: シーバス釣りでも、基本ルアーをアクションせずにスローリトリーブとかで釣る事が多いのですが、「単純にリールを巻くっていう行為だけでこんなにヒット率が変わるのか」っていうぐらいに綺麗に巻ける人とそうでない人とでアタリの数が変わったりするんです。
リールを巻くにも癖が出たりするんですね。巻き上げるのが速い人とか、巻き下げるのが速い人とか。一回転巻くのにスピードが違うのでルアーの動きが綺麗ではなかったりするんです。
ルアー釣りをしていたら、そういう事を学べる。「リールを一定のスピードで巻くんですよ」って言って、やらせてみると意外に難しい事がわかったりするんです。
担: 驚きですね。リールを巻くっていう単純作業でそんな違いが生まれるなんて。
平: さらに、放っておいたら沈むジグとか重たいものを投げて、レンジキープしながら一定のスピードで巻いてくるってなると結構難しいですよ。そいうのは、フカセ釣りでは学べない事ですよね。
そういうのも全部ひっくるめて、釣りの総合力はかなり上げてくれているのではないかと思います。海を感じる力が養えるのは、確かですね。
担: エサ釣りもルアー釣りも、機会があればどんどんチャレンジしたほうが良いですね。
平: もし、「最近釣りに行っても調子悪いんだよなー」っていうフカセ釣りの人がいらっしゃったら、ちょっと違う釣りをしてチャレンジというか気分転換をしてみたほうが、逆に良いかもしれないですね。自分もそれで結構、良い結果につながった事がありますから。
担: 例えば、どんな事があったのですか?
平: 自分がはじめてジャパンカップに優勝したときは、実はその数年の中でも一番磯に行っていない年で、土日は行ってたんですがそれでも年間にしたら50日ぐらい減ってしまって。
当時ボートガイドも本格的にやりはじめた時でもあったので自分の中でもファイナルへ出場するまですごく不安で、「ジャパンカップ前にこんなに磯に行っていなくて大丈夫かな」と思っていました。
だけど、ルアーを投げる機会が多くなったことでキャスティングの精度とかリズムとかが養われていて、フカセ釣りの仕掛けを投げたりするリズムがワンテンポ上がったりとかしていたんです。
同じ魚釣りだから、結局は繋がっている部分も多いですね。
担: なるほど。例えば、潮の中に仕掛けを入れていくのが苦手な人だったら、イサキのシーズンにボートから釣りをすると特訓になって良いかもしれないですね。
平: そうですね。
平: 「仕掛けを馴染ませる」というのもおもしろいですね。
すぐ隣で肩が当るぐらいの距離で同じ仕掛けで同じ潮をながしているのに、片方の人は10匹釣れて、もう一方の人は1匹しか釣れないってことがあるんですが、それはラインの出し方ひとつで、乗る潮が違ってきたりしてしまうからなんです。釣れている方はゆるく流せているのですが、もう一方の方は少しラインを張ってしまう癖がついていたりして。
「これで、張ってしまっているんですか!?」
「実は、張っているんですよ。オモリを打って調整しましょう」ってやってみると、
「ほら、キター!!」ってなったりします。
他の人の流し方を見ていると、「この人はこんな癖がついてる」とか分かるようになるし、「この時はこのぐらいのオモリをつけて、ウキ下を詰めて早く沈めたら良いのでは」とか思いついたりするんです。あとは自分では絶対やらないことをやる人も居るので良い勉強になりますよね。
担: 磯だといつも同じ仲間の人と磯にあがったり、一人だったりすることも多いですしね。
平: あとは、専門用語が通じない本当に初心者の方に対しては、説明の仕方とかも勉強になります。
例えば「ベール」をあけますと伝えると「えっ? ベール?? ど、どれですか???」となることもありますし、レンタルタックルで「ドラグ」を緩めにしているので、自分で調節して下さいとお伝えしたときも、ドラグをご存知なくて「あ、このネジみたいなものがドラグって言うんですよ」みたいなやりとりをすることもあります。
自分が釣りのハイエンドの世界に居るとそういう話は必要なくなってしまうのですが、ガイドの世界はまったく別なんです。だから、説明の大切さを日々学ばせてもらっています。ましてや、子供にはまったく通用しないですから(笑)。
担: 伝える技術も磨かれていっている、という事ですね。
平: プロ活動に通じているすごく大事なことだと思います。
担: 動画やメディアとかでも「いかに解かりやすく伝えられるか」ってところは、プロアングラーに問われるところですからね。そういった意味でも、これからもガイド業をしっかりできると良いですね。
平: ところがここ2年ぐらいは、減ってしまっているんですよ。撮影とかプロ活動のほうが忙しくなってしまっていて……。それでも、出来る範囲でガイドをして、毎年予約でいっぱいになっているということは本当に有難いことです。私自身も楽しませてもらっていますし。
担: お客さんの中には、平和さんのガイドボートに乗るってことで凄く緊張して構えてしまう人とか居たりしそうですね。
平: たしかに凄く緊張されて来られる方もいますね。挨拶もできないぐらい。(笑)
でも一回来てしまえば、すぐに気楽に話せるようになります。
自分のガイドって時間が結構長かったりするんです。その間、ずっと魚釣りしながら一緒にすごしていると、自然とそうなりますね。もう、すぐですよ。
担: お客様の「これが釣りたいです」とか「こういう釣りしたいです」といった要望は、ある程度考慮してもらえるのでしょうか?
平: チャーター船の場合は、全然オッケーですよ。うちの場合は9割近くチャーターでお越しになる方ですから。まず、「何をやりましょうか?」ってお聞きして、シーバスであればシーバスやりますし、一日中キジハタ狙いたいという方であれば根魚釣りオンリーでやります。
担: お客さんの要望と言うか、期待に応えられた時がやはり一番うれしい瞬間ですか?
平: なんか、プロデュースしている感じです。
例えば「この潮で、この風で、この三日間こんな感じだったんです。今日の午前中はあんな感じだったでしょ。昼からはここでこんな感じだと思います。」っていう風に行った先でお客さんが「キタッ!!」ってなると、心の中でガッツポーズしますね。「ほらっ!! やっぱきたー!!」って。
そういう時が、やっぱり嬉しい瞬間ですね。自分が釣るよりも、時に難しかったりしますしね。
それぞれによってスタイルも経験も違う中で、それぞれにヒットするような総合演出が船長にはできるんです。それが出来た時は、自分が釣るよりも嬉しいです。
担: 船長業ならではの喜びですね。やめられないですね(笑)
平: 本当に楽しいです。
担: 来られたお客さんに、こんなことを感じて欲しいとか、こういうところを楽しんでもらいたいみたいな事ってありますか?
平: そうですね…、のんびりしてもらいたい、ですかね。出船は夜が明けたら何時でもいいですよって言っていますし、終わりも長くて日暮れまでは何時でもいいですよって言っています。よほどのことが無い限り、ポイント取りの為にぶっ飛んで行くみたいな事もないですし。しっかり準備して、のんびり行って、長くやりたい人は好きなだけやってもらえばいいので。逆に早くあがりたければ、早くあがりますし。とにかく、ガツガツし過ぎないよう、雰囲気作りをするようにしています。ガツガツすると気がしんどいですし、海に出るスペシャル感はそこではないと思ってますから。楽しんでもらいたいですね。
もちろん、ゆっくり出ても何とか釣れるように一生懸命(魚を)探しますよ。朝イチの時合がチャンスみたいなところは魚釣りなのでありますけど、そこは置いておいたとしても「一日楽しかったな」と思えるような、海遊びの延長としてのガイドをしたいと思っています。
ですので、意外と家族連れとかが多いんですよ。3割から4割ぐらいはそうかもしれません。
担: 釣りを楽しむなら、せかせかするよりものんびりしたほうが良いですよね。
平: のんびり行きたい人は、朝9時に行きますって言って15時に帰ってくるみたいな方もいらっしゃいます。もちろん、釣るために手は抜かないですが、美味い魚が釣れたらいいですねって、イメージして楽しみながら釣ってもらって釣れた魚が大きかったら尚更面白いですねっていう感じです。季節を感じながら海遊びをする手段として選んでもらえたら良いかなと思います。
担: 本日もいろいろとお話頂きまして有難うございました!!
平: こちらこそ、有難うございました。
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